2012年04月02日

10.エゾ鹿猟用の銃と弾。

エゾ鹿は2000年頃には50m前後に居ましたが、その後駆除が始まると共に徐々に距離が
遠くなり、今では100~150mに多く、日によっては150m以遠に居ますから、やはりライフル
銃がベストです。
しかしライフル銃の所持までには10年の歳月が必要でそれまでは必然的に対象はサボット
スラグ銃になります。(ご安心下さい、サボットスラグでも130mは十分当てる事が出来、
150mまで何とかなります。もちろんパワー不足の心配はありません。)
ノーマルスラグ銃は射程が100m未満ですから事実上使えません。


エゾシカ猟に使えるサボットスラグ銃の作動方式と口径
ここではノーマルスラグの説明を省きます。
サボットスラグ銃にも12番と20番がありますが、初速もエネルギーもショットガンは腔圧で先に
限界が来る為に、小口径銃がライフルの様に高速になる事はありません。20番はエネルギー
が30%前後減少して多少撃ち易くはなりますが、その分シカを倒すエネルギーも減少します。

サボットスラグ弾はライフル弾に比べて空気抵抗が大きく、遠射時における弾速低下から来る
パワー不足が予想されます。近距離ならばエネルギー的にも不足は無く不利になりませんが、
100m超えを考えると12番でないと圧倒的に不利になると思います。

もう一つの理由として命中精度は良い弾との相性が重要ですが、12番以外は弾の種類が
少なく、良い弾に巡り会えない可能性が高くなる事も20番のマイナス要因です。

銃はボルト式が1番命中率に優れており、将来ボルト式ライフル銃の運用を計画している人は
絶対ボルト式のスラグ銃にすべきです。現在ボルトアクションとしては数種の銃が入手可能
ですが、12番となると実質サベージオンリーとなります。

照準装置は絶対にスコ-プ式が有利、ドットサイト式やホローサイト式よりも映像が明るく
クリアーな為です。倍率は4倍固定が安くて視野が広くて有利です。3~9ズームの3倍時より
4倍固定は視野が広いからお奨めなのですが、余り売っていないのが難点です。


ライフル銃とサボットスラグ銃の比較
精度と遠射能力においてサボットスラグ銃はライフル銃に敵いません。
ライフル銃は100mで15mmを保障しているメーカーがあり、私自身がそのクラスの市販
ライフルの150mワンホールを経験していますから、銃と弾の性能は100mで25mm以下に
あると言って良さそうです。

サボットスラグ銃はこれに対して50mで35mmを謳っているメーカーもあり、R生徒は4発を
12mmにまとめた事もありますが、硬い表現では50mmでしょう。

サボットスラグの50mで50mmは100mで100mmとなり、ライフルの100mで25mmでは4倍の
差があると言えばそうなりますが、中心に対して言えば弾着が40mm弱広がる事を意味します。

急所の大きさは少なく見て直径で150mmありますから、ライフルで当る人は殆んどスラグ
でも当てられ、スラグだから未回収になる確率は非常に僅かです。
言葉を換えれば100mに対してはサボットスラグで十分な精度を持っています。


エゾ鹿猟用のサボットスラグ銃
北海道のエゾ鹿用に持って来るのは12番のボルトアクション銃、
これに4倍固定のスコープを付け、全長を105cm程度にカットし、
ストックを本人の体形に合わせた銃です。他の型式は考えられません。
サボットスラグ弾は絶対に市販弾の方が良く当たります。


          SAVEGE M210 12番  
10.エゾ鹿猟用の銃と弾。
         

筆者は走る鹿に絶対に当ててやろうと思い、頑張って実戦正味約100日、約500回の出会い、
約2000発を消費、それをクリアした頃から当たる様になりました。
普通に考えれば100日通う事も鹿に500回出会う事も絶望的です。
と言う事で走る鹿に対しては当面は論外であると思って下さい。

結論としてライフル銃もサボットスラグ銃も連射はありえません。
止まっている鹿にも中々当たらない人が走る鹿に当たる筈など無いからです。

バトラーキャップは不要、スリングは車内では不要でポケットに入れておきます。
車の中ではボルトを開け、セーフティを掛け、銃にはカバーを掛けます。カバーはすぐに外せる
様にチューニングが必要です。

弾は1発をすぐに入れられる様に何時も右手に持ちます。1発必中でマガジンは使いません。
又倒れた鹿が起き上がる可能性もある為、数発はすぐに希望の方向で取り出せる様にする
必要があります。これを単発連射と言います。
最も必要な練習は発砲準備動作、スコープは構えたらすでに目標が捕らえられていて当たり
前にしなければなりません。スコープは照準器であり、捜索具ではありません。


エゾ鹿用のライフル銃
作動方式は言うまでも無くボルト式、他の作動方式の銃は考えられません。
ボルト式、複列式(着脱)マガジン、全長105cm程度、口径308、スコープは当初4倍で慣れたら
6倍、安全装置を掛けたまま脱砲が出来る、実質サコー75又は85オンリーになります。

当面はマガジンを使わず単発連射になりますが、この時に複列式でないと実質使えない或いは
非常に不利になりますのでご注意下さい。
またその後も圧倒的に複列マガジンの方が有利です。


エゾ鹿猟用の弾薬
弾頭はもちろん非鉛でなければならないのは言うまでもありません。
スラグもバックショットも同様ですが4号バックショットだけは鉛弾OKです。

5-1.サボットスラグ弾:ハンドロード出来なくはありませんが、精度を出す為には火薬量等を
精密にするだけではなく、出来上がり寸法も精密にしなければなりません。
柔らかいプラスチック薬莢でこれを出す事は事実上不可能で、リロード弾は安く作れても、
精度的に非常に不満足な物しか作れません。

従いまして練習用の1部にリロード弾を使うのは良いとしても、練習用も実戦用も工場製弾の
方が圧倒的に有利です。

5-2.ライフル弾:近年の工場製弾の精度は素晴らしく改善され、リロード弾の方が精度が上と言う
時代は終わったと言えます。
安く作れますから練習には良いとしても、実戦に使うには数々の不安が付きまといます。
実戦には工場製弾を強くお奨めします。

過去 ハンドロード は次の様な トラブル が本当にあり、少なくとも7名の生徒の猟の全部
もしくは1部が台無しになりました。
これに陥る確率は毎年数人の新入生徒の中の1人でしたからとんでもない恐ろしい確率です。
  1.マガジンに入らない弾で使えなかった。
  2.脱砲したら弾頭だけが銃身内に残った。
  3.薬室に入らない弾で使えなかった。
  4.火薬の入っていない弾で銃身内停弾。
  5.オーバーロードで銃が壊れた。
  6.肝心の時に不均一弾だった。
  7.遠近2種類の弾選択をモタ付き、貴重な大物チャンスを見送った。
  8.クセで薬莢を回収しようとして、肝心のチャンスを有効に生かせなかった。

数mmの精度の為なのか1発数百円の為なのか分かりませんが、1回のチャンスが少なく見て
1万円以上に付きますからこれを棒に振る可能性は少しでも避けるべきです。
どうしてもハンドロード弾を使いたい生徒は上記に絶対に陥らない様に全ての項目をしぶとく
確認の上でお持ち下さい。


ゼロイン
ゼロインはサボットスラグ銃は100m、ライフル銃は150mゼロインがベストです。
遠射に憧れる余り、肝心の近射をミスってはなりません。300mゼロインはメリットゼロです。

落差補正は本来するべきですが、獲物を目前にして距離計で計測する事は不可能です。
目視は周辺の地形や明暗によって数倍の誤差を生んでしまいます。

間違った距離により補正すれば補正しない方がマシと言う事になりますし、そう言う補正では
自信が持てません。射撃は少しでも雑念や不安があると命中率が激減します。

そう言う事ですから原則として落差補正は行わない事が、1番良い結果を生みます。
もちろん遠射用と近射用と弾を用意するのも同様で、良い結果に結び付く事はありません。

実戦出撃に際して。
1.ゼロインはもっとも多用する距離150mに合わせる。(スラグは別)
2.落差補正は行わない。
3.弾は1種類の工場製弾を1日当たり10発用意。
4.クリーニングは行わず、最終サイト確認終了後、そのままお持ち下さい。


粗点:ナミビアポイント。
10.エゾ鹿猟用の銃と弾。
エゾ鹿の急所はかなり前方にあります。少し位ならずれても即倒しますが、10~30秒後に
起き上って逃げ出します。念のため、倒れている内に上半身にもう1発撃ちこんで下さい。
前方に少しずれても問題は有りませんが、後方に少しずれると即倒せず走り去ります。
どうしても失中が怖くて胴体中央寄りの照準になってしまいますが、前方にずれた方が、
また下方にずれた方が問題は少なく、後方にずれるのは最悪です。

従来通りの心臓狙いも小物には悪くないのですが、大物には正しくヒットしても数百m以上
走られ80%が未回収になってしまいます。


スラグが当らない人は
なお、スラグがどうしても当たらない人(50mで100m用の的紙からはみ出してしまう人)にはフルチョークと4号バックショットのバランスの良い短い普通のリブ銃身の散弾銃がベストであります。
この場合射程距離は40~50mになり、エゾ鹿が100~150mに多い事を考えますと不利
ですが、数割が50m前後におりますのでこれの捕獲に賭けるのです。
時期は解禁寄りの方がやや距離が短く有利です。


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